【貸株サービスのデメリット3点】後悔しないために知っておきたいこと

「貸株サービスの主な注意点・デメリット・リスク」について説明します。

貸株をすると、

  • 株の保有者(名義)が変わる。
  • 分別管理・投資者保護基金の対象から外れる。
  • 信用取引の代用有価証券から外れる。

貸株すると、名義が変わる

貸株サービスを利用して保有株を証券会社に貸すと、その株の名義が変わります。

このことを理解するために、先に前提知識を押さえておきます。

前提知識

そもそも株の保有者は、株主名簿というもので記録・管理されています。

株主名簿に載ることが、株主である証になります。

権利確定日に株主であれば、すなわち、権利確定日に株主名簿に載っていれば、その株の優待・配当・議決権などの権利が受け取れます

 

本題

実は、貸株サービスを通じて、株を証券会社に貸すと、株主名簿に記録される名義が、もとの保有者(貸出者)ではなく、その証券会社になります。名簿上、証券会社が保有していることになります。

特に、権利確定日にも株を証券会社に貸しており、名義が変わっている(=株主名簿に載っていない)ということは、株主優待などといった権利が受け取れなくなるということです。

株主としての権利は、証券会社に移転してしまいます

具体的なデメリットを3つ挙げます。

権利確定日等で貸株をしていると、

  • 株主優待、コーポレートアクション、議決権、株主提案権等の権利を受け取れません
  • 継続保有や長期保有特典などを実施している銘柄については、条件を満たせない可能性が出てきます。
  • 配当金が受け取れません。したがって、配当控除も受けられません。

ですので、権利目的で株を保有している方は、注意が必要です。

 

長々と書きましたが、要するに、「株主としての権利を受け取れないリスクが出てきますよ」ということです。

※関連するデメリットとして、短期大量譲渡に伴う変更報告書への掲載もありますが、マイナーなので、ここでは割愛します。

 

貸株すると、分別管理・投資者保護基金の対象から外れる

また、貸株サービスを利用して株を証券会社に貸すと、信用リスク(貸出先の財務状況が悪化して、貸したものが返ってこないリスク)というものを負うことになります。

これを理解するために、ここでもまず、前提知識を押さえていきます。

前提知識

そもそも、株を普通に持っている状態(保護預り)ですと、分別管理の対象となります。

 

分別管理:

金融商品取引業者が預かる顧客の有価証券や金銭などの資産を、証券会社自身が保有する資産と明確に区分して管理することにより、証券会社が万一破綻した場合でも、顧客の資産が保護されるような管理方法のこと。

出典:日本証券業協会

 

すなわち、証券会社は、自社の資産と投資家の資産を、財布を分けて管理しています。

 

さらに、万が一、分別管理が効かなくても、投資者保護基金という制度で投資家の資産は守られます。

 

投資者保護基金:

私たち、日本投資者保護基金(以下「当基金」といいます。)は、万が一、何らかの事情で証券会社が破綻し、分別管理の義務に違反したことによって、お客さまの資産の返還が円滑に行われない場合には、返還できないお客さまの資産について、当基金がお客さま一人当たり上限1,000万円まで補償を行います。

出典:日本投資者保護基金

 

銀行預金で言うところの、預金保険制度みたいなものです。

つまり、証券会社が倒産し万が一分別管理をしていなかったとしても、株を普通に持っている状態(保護預り)であれば、限度額までは基金が補償してくれます

 

本題

貸株サービスを通じて株を貸しても、担保を受け取れていません。無担保の契約です。

さらに、貸した株は分別管理の対象外となってしまいます。

証券会社は、自社で持っている株と、貸株サービスで借りた株を、一つの財布で管理してもOKになるということです。

また、貸した株は投資者保護基金の対象にもなりません

 

つまり、貸株サービスを利用すると、投資家の資産を守る仕組みの対象外になるため、貸出先に対して信用リスクを負うことになるのです。

 

 

具体的には、潜在化するリスクが2つあります。

  • 証券会社(借入者)の信用リスク
    証券会社が倒産したら、貸した株が返ってこない可能性があります。
  • 証券会社(借入者)からの貸出先(また別の金融機関)に対する信用リスク
    貸株サービスを提供している証券会社は、貸株市場にて機関投資家等に貸出しています。その貸出先が倒産したら、貸した株が返ってこない可能性があります。

 

貸株すると、信用取引の代用有価証券から外れる

この章は、信用取引も行っている投資家向けの説明になります。

そうでない方は、読み飛ばしてください。

 

信用取引の代用有価証券を証券会社に貸すと、その株は代用有価から外れます

つまり、委託保証金が減少し、信用余力が下がってしまいます。

信用取引を積極的に行う方にとっては、見逃せないポイントとなります。

 

貸株サービスの注意点まとめと対策

改めて、今回の内容を表で整理します。

 

変わること 貸株サービス利用者が負うリスク
名義が変わる 権利が受け取れないリスク
分別管理・投資者保護基金の対象外になる 信用リスク
信用取引の代用有価証券から外れる 信用余力の減少

 

 

これら全てのリスクを負わなければならないとなると、貸株サービスを使いにくいですよね。

貸株サービスのリスクを知ってほしかったため、網羅的に取り上げました。

思考停止で貸株サービスを利用するのは危険だよ」ということを念頭においてください。

 

 

ただし、実際はこれらのリスクを軽減できます。

貸株サービスを提供している証券会社も、個人投資家への利便性向上のため、これらのリスクを放ってはいません。

証券会社が用意した様々な機能によって、上記のリスク(潜在化するデメリット)を補完・軽減してくれています

その機能たちを正しく理解し、使いこなしたいですよね。

 

実は、証券会社によって機能に若干の差があります。

機能の比較を、次の記事でしています。

貸株サービスのリスクを減らそう~便利な機能比較~2021年1月最新版

 

貸株サービスの機能を見極め、自分に合った証券会社を見つけて、上記のデメリットを軽減しつつ、貸株金利というメリットを享受していきましょう。

 

今回の記事は以上です。ありがとうございました。

 

補足①貸株していても好きなタイミングで売却・貸株解除できる

貸株サービスを利用すると、上述したとおり、間違いなくその株は証券会社の財布に入り、貸株市場で運用されます。

個人投資家の手元(=証券口座)にないわけです。

では、「貸株していても好きなタイミングで売却・貸株解除できる」のでしょうか?

 

結論、できます。

現状、特別な制約がない限り、自由に売却・貸株解除できるように証券会社がルール作りをしています。

個人投資家にとっては便利なルールですが、証券会社としては一苦労だったりします。

 

例えば、証券会社は、貸株サービスで借りていた株が売却された場合、売却の決済に充てるための株を用意しなければなりません。

しかし、株が手元にない場合、貸株市場で貸していた株を貸出先から返してもらったり、再度別の証券会社から借りたりしています。

 

※この再調達の手間の件は、楽天証券のように「権利確定日を超えて貸株した場合、貸株レートを相対的に高くする」話に繋がります!

今後、貸株レートの決定要因の記事で深く解説します。

 

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