【貸株市場を徹底解説①】信用取引との密接な関係

これから数回にわたり、「”貸株市場”で行われていること」と「”貸株市場”のこれから」について解説していきます。

その過程で、貸株サービスと信用取引の密接な関係が見えてきます。

導入として今回は、前提知識(現物取引・信用取引)を簡単におさらいし、貸株市場の説明を触りだけします。

 

  • 現物取引は、現金で株を買って、売る取引である。
  • 信用取引は、現金や株を借りて、株を売買する取引である。
  • 証券会社は、信用取引をする投資家に資金や株を貸すため、資金市場や貸株市場から調達している。

現物取引とは

現物取引”とは、「株を買う(→売る)」という基本的な株式投資です。

 

投資家が踏む手順は、ざっくり次の通りです。

  1. 証券口座に入金し、
  2. 現物株を買う。
  3. (権利確定日に保有していたら、権利を取得する。)
  4. 現株を売る。ここで損益が確定する。

 

ポイントは次の通りです。

  • 値動きによる収益機会のみならず、権利の受け取りもできる。
  • 収益=売買益+配当+優待
  • 取引する場合は、「買い」からのみ。「売り」からは取引できない。
  • 買付余力は、現金余力の範囲内で。

 

現物取引でできないこと(「売り」から入りたい。もっと大きな金額で取引したい。)もあります。

これらは、”信用取引”という商品で補完します。


信用取引とは

いわゆる”証拠金取引”の一つです。つまり、担保(現金や有価証券など)を差し入れて、それに応じて許された資産を借りて売買できます(ここがポイント)。

日本における信用取引は、”制度信用取引”と”一般信用取引”の2種類に分けられます。
違いは、”貸株市場”を説明した後に解説します。

 

信用取引をする際に投資家が踏む手順は、ざっくり次の通りです。

  1. 証券口座の余力(現金、代用有価証券)をもとに、
  2. 信用余力が与えられる。
  3. その範囲で、証券会社から資産を借り、
  4. ポジションを取る(=信用買いor売りをする)。
  5. (権利日を跨いだら、権利の調整などを行う。)
  6. ポジションを決済(反対売買 or 現引・現渡)する。

 

ポイントは次の通りです。

○投資家視点

  • レバレッジをかけられる(=現金余力以上の金額を動かせる)。
  • 「売り」から入れる。
  • 値動きに特化した取引が可能。
  • 収益=売買益+配当金相当額
    ※配当金、優待は受け取れない

 

○市場全体について※「信用取引は危ないことばかりではないよ。意義があるよ。」ということに触れたかっただけです。

  • 与信により、仮需給を引き出す。
    つまり、投資家の、「もっと買われるべき」「もっと売られるべき」という思惑を、”注文”→”約定”という形で実現させる。
  • これによって、「公正な価格形成に寄与する」と言われている。
  • ただし、取引が加熱したと判断された銘柄については、公的機関(東証や日証金)が規制をかける。

参考:日本取引所グループ 信用取引の目的

 

 

信用取引をしたい個人投資家(顧客)は、”信用取引”という形で、注文を証券会社に出します。

では、投資家の信用取引注文を受注した証券会社は、その後、何をするのでしょうか?

 

・・・・・・・・・・

 

これから、この裏側の仕組み、つまり、「証券会社の向こう側でおきていること」に迫ります。

 

先ほど、信用取引によって、投資家は「担保を差し入れて、それに応じて許された資産を借りて売買できる」と言いました。

つまり、証券会社は、”なにか”を投資家に貸しているわけです。

”なにか”とは、何でしょうか。(くどいですね。すみません。大事なところなので。)

 

そう、”資金”と””です。

 

具体的に述べますと、

  • 信用買い(信用取引という枠組みで買いを行う)の注文を投資家から受けた場合、買付するための資金を投資家に貸します。
  • 信用売り(信用取引という枠組みで売りを行う)の注文を投資家から受けた場合、売却するための株券を投資家に貸します。

 

要するに、証券会社が信用取引の裏側で、”がんばっている”(株と資金の在庫を用意している=調達している)わけでございます。

 

 

では、証券会社は、投資家に貸す資金や株を、どこから調達しているのでしょうか?

・・・

貸株市場”と”資金市場”です。

 

貸株市場では株を、資金市場では資金を調達しています。

 

今回は、貸株がメインテーマですので、貸株市場に重点を置きます。

 

信用取引をすると、株や資金を証券会社から借りることになるので、コストとして、”売買手数料”の他に”金利”や”貸株料”などがかかるわけです。

信用取引をする(、すなわち、融資・貸株を元手に取引をする)と、借りた資産が転換されます。
しかし、残念ながらそれらは、貸してくれた機関が担保として受け取ります。具体的には・・・

  • 投資家が信用買いしたときに届いた株は、証券会社サイドのものになります。
  • 投資家が信用売りしたときに届いた現金は、証券会社サイドのものになります。

 


貸株市場とは

貸株市場は、「株の貸し借りが行われる」市場です。

物理的な場所はなく、概念的なものです。

図で整理すると、このようなイメージになります。

 

 

この図のように、貸株市場は、株式市場で行われる注文・約定・受渡を助けています

例えば、次のようなケースです。

  • (注文・約定)貸株市場で株を借りられるから、空売り(持ってないけど売る)ができる。
  • (受渡)売り約定したけど、受渡当日になぜか株が無くて、株の受け渡しができない(=フェイルという)ときに、株を借りて回避する。

 

貸株市場をさらに細かく見ると・・・

 

 

情報量が多すぎますね。(文字が潰れています・・・)

これが解読できたら、貸株市場の基本的な理解はOKです。

 

次回から、この図の説明をみっちりしていきます。お楽しみに。

 

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下記の書籍を参考に執筆いたしました。