【貸株市場を徹底解説②】基本的な取引の仕組みと分類

【貸株市場を徹底解説②】基本的な取引の仕組みと分類

今回は、貸株市場の「基本的な取引の仕組み」と「分類」を解説します。

 

前回の記事の続きになります。

【貸株市場を徹底解説①】信用取引との密接な関係 | 貸株.com (kashikabu.com)

 

 

  • 株を貸した場合、基本的には現金などの担保を受け取るため、「貸し手であると同時に借り手でもある」という二面性がある。
  • そのような取引が行われると、”貸株料”や”担保金利”、発生した権利が受け払いされる。
  • 貸株市場は、”日証金”が絡む”制度貸借”という仕組みと、日証金が絡まない”一般貸借”という仕組みの2種類に分けて考えられる。

 

貸株取引によって株と担保が動く

貸株市場には、証券会社や信託銀行、証券金融会社などといった数多くのプレイヤーが参加しています。

プレイヤーは様々ですが、貸株の一取引に注目すると、株の”貸し手”と”借り手”に分けられます。

 

株の貸し手と借り手の間で、株を貸す取引(以後、貸株取引といいます)が成立すると、次のような資産の移動が起こります。

  • 株の貸し手は、借り手に株を渡し、代わりに借り手から担保を受け取ります。
  • 株の借り手は、貸し手から株を受け取り、代わりに貸し手に担保を預けます。

このときの担保は、現金であったり、有価証券で代用されたりと、取引契約によってまちまちです。

ここで抑えておきたいポイントはこちら。

  • 株の貸し手は、株の貸し手であると同時に、担保資産の借り手でもある。
  • 株の借り手は、株の借り手であると同時に、担保資産の貸し手でもある。

この二面性を念頭に置いておきましょう。

以後、説明がややこしくなるので、次の図を参照しながら読み進めてください。

 

実は、似たようなことが信用取引でも行われています

投資家が信用買いをするときには、証券会社から現金を借ります。
買付によって届いた株は、担保として証券会社が預かります。
つまり、投資家は、証券会社を取引相手として、現金を借り、株を預けています。
投資家は株の貸し手、証券会社は株の借り手のようなものです。

投資家が信用売りをするときには、証券会社から株を借ります。
売却によって届いた現金は、担保として証券会社が預かります。
つまり、投資家は、証券会社を取引相手として、株を借り、現金を差し入れています。
まさに、投資家は株の借り手、証券会社は株の貸し手です。

 

 

(疑問)委託保証金はなんなのさ。これも担保じゃないの?証券会社は、投資家から担保を取りすぎでは?

結論からいうと、委託保証金は、ポジションの評価損益を管理するためのバッファーです。

確かに、信用取引をすると、上記のように担保を証券会社に差し入れることになります。
しかし、その額は取引当初の評価額によるものであって、時価の変動次第ではその担保が見合わなくなります。
かといって日々担保評価するのも面倒なので、委託保証金、という形であらかじめ投資家は余力(バッファー)を求められる、ということになります。

信用取引の仕組み | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

 

(例)信用取引で100万円分買い建て、時価評価が90万円になった場合、証券会社は、投資家に100万円を融資していたはずなのに90万円分の担保しか受け取れていない状態になります。これを、委託保証金でカバーします。

 

このように、厳密には、証券会社と投資家の間でも株の貸借が行われています。

しかし、ここでは説明を簡潔にして、金融機関同士の取引の説明に焦点を当てるため、金融機関の間で行われる貸株取引の場を貸株市場とします。



貸株取引に伴う精算

貸株取引によって資産の一時的な交換をすることにより、対価の受け払いが発生します。

対価の移動は、次のように要約できます。

  • 株を貸した側は、株を貸していた対価として貸株料を受け取り、担保を預かっていた対価として、担保金利を支払います。
  • 株を借りた側は、株を借りていた対価として貸株料を支払い、担保を差し入れていた対価として担保金利を受け取ります。

 

その他、貸借期間中に権利確定日が含まれていた場合も、契約によってその権利の精算が行われます。
権利確定日時点の株の名義が借り手になってしまい、貸し手は権利を受け取れないからです。

信用取引の例でいうと配当落ち調整、貸株サービスの例でいうと配当金相当額です。

信用取引で買い建てている投資家は株を貸している(担保として差し入れている)最中なので配当落ち調整を受け取り、信用取引で売り建てている投資家は株を借りている最中なので配当落ち調整を支払います。
貸株サービスで株を貸している投資家は配当金相当額を受け取り、貸株サービスで株を借りている証券会社は、配当金相当額を支払っています。

 

読んでいて世界が広がるとともに、ごちゃごちゃしてきましたね。
私も書いていてごちゃごちゃしてきています。ミスのないように気をつけていきます。



貸株市場の分類:制度貸借と一般貸借

貸株市場は、その仕組みによって”制度貸借”と”一般貸借”の2種類に分類できます。

貸株市場=制度貸借+一般貸借

※制度貸借、一般貸借という用語は、「貸株市場整備に向けた研究会(1997)」で使われた表現です。正式名称ではありません。便利な表現なので、本稿でも使わせていただきます。

 

呼び名が色々ありますので整理しておきます。

制度貸借=制度金融=(日本証券金融でいうところの貸借取引

一般貸借=(日本証券業協会でいうところの株券等貸借取引

 

ここまで来ますと、制度信用取引一般信用取引の違いを説明できるようになります。

制度信用取引と一般信用取引の仕組み(取引ルール)の違いは、利用されている貸株市場の違いが主です。

制度貸借の仕組みの上に成り立つ信用取引は”制度信用取引”と呼ばれ、それ以外(一般貸借)の信用取引は一般信用取引と呼ばれています。

 

では、制度貸借と一般貸借が、どのように異なるのか。両者の関係はどうなっているのか。

次回以降、制度貸借の仕組み→一般貸借の仕組み→両者の比較、という順で説明していきます。

 

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下記の書籍を参考に執筆いたしました。